[音楽療法とは][おすすめ書籍]

おすすめ書籍
 
 
      
 ホスピスのこころを語る〜音楽が拓くスピリチュアルケア〜 NEW!
              柏木哲夫、栗林文雄 共著
                               一麦出版社 2,000円+税
 私は現在看護学生である。実習時には病院へ行き、患者さんを受け持ちケアをさせていただいている。その実習の中で同じ実習グループメンバーの受け持ち患者さんが突然亡くなった。自分でも掴みきれない思いにかられた時、本書を手に取った。
 著者である栗林氏自身が、緩和ケア病棟で人生の最終楽章を迎えている患者さんに対し実践してきた音楽療法の体験を語り、それに対して緩和ケア医学領域における第一人者である柏木氏が意見を述べる、対談形式の書籍である。ホスピスとは何かというテーマで、ホスピスの歴史、ホスピスで実際にどういう事が行われているのか、等について書かれており、また、柏木氏のエピソードを中心に語られる章も興味深い。本書のサブタイトルにもなっている“スピリチュアルケア”をテーマに対談している章もある。
 スピリチュアルの意味を言い表す具体的な言葉を見つける事が難しい。柏木氏はスピリチュアルを「存在の意味」と表現している。私はこの表現に共鳴した。未熟ながら私なりに表現すると「生きる意味」である。例えば、“スピリチュアルの側面が病んでいる”という表現を、「生きる意味を見失う」と捉えると今の私には理解しやすかった。私はまだまだ臨床経験が浅いので、これから多くの患者さんと交流し、考えをさらに掘り下げたい。
 他には、家族へのケアや死について章が設けてあり、様々な角度から多くのことを考えさせられる一冊となっている。
                                    岐阜県音楽療法士 大森 智
 生涯発達の心理学
              
高橋恵子、波多野誼余夫 共著
                               岩波新書 700円+税
 長寿世界一の日本といわれる今、長寿であるが故の「老いる」ことへの不安や恐れを抱く人は多い。私は、高齢者施設での音楽療法で、過去の振り返りや機能の衰退を遅らせる支援を重視しがちであった。
 ある時、高齢者の自立を尊重し、地域に出向いて“生きがい見つけ”を続けているグループホームの所長さんにこの本を紹介していただいた。「老いることは衰退の反面、熟成していく時間を持ち続けること、自分らしさをより確立し、若者より自分を肯定できる。不便なところは人生順だから遠慮なく援助を受け、熟成した人間として社会貢献しよう」とある。
 人は生涯発達し続ける力を持ち、一生を見通して発達を考えることを教えられた。支援する側は、命尽きるまで発達し続けるものにも目を向けるべきだと気づき、前向きな支援を考えるきっかけになった。心理学という面から発達観を問い直す一冊である。
                                    岐阜県音楽療法士 杉山 祐子
 認知症 ケアと予防の音楽療法 
              佐々木和佳、伊志嶺理沙、二俣 泉 共著
                                 春秋社 2,200円+税
 高齢者施設の音楽療法に携わると色々な壁にぶつかることがある。つい最近のことであるが、この間まで歌詞も見ないでいきいきと歌っていた対象者が無表情になり、歌わなくなってしまった。よくよく周りを見渡すと、歌わなくなっている人が徐々に増えていることに気付いた。そんな戸惑いを抱いていた折に出会った本である。
 近年、認知症の望ましいケアについて、精神科医の室伏氏が「その老人の心の向きを知り、その老人の生き方を援助することがケアであり、そのことにより認知症高齢者がいきいきと人間らしく生きられる」と主張されているそうだ。その理念に基づき、著者らは、音楽を聴く、歌を歌う、楽器を鳴らす、リズムを打ったり手拍子をする、などの音楽活動の中で、「できること」を見つけ働きかけることが、音楽療法ができるケアではないか、と記している。
 第3章の「認知症ケアとしての音楽療法」では、「支援の方法に到達するまでの道筋表」が記され、「できること」からのセッション例も書かれている。この「道筋表」を個々の対象者に当てはめることで、音楽療法のケアプランが立てやすくなり、あたかも自分の悩みに答えてくれるための助け船のように感じた。
                                    岐阜県音楽療法士 英 通代
 平田紀子のちょっと嬉しい伴奏が弾きたい 
                              平田紀子 著
                                 音楽之友社 1,800円+税
 アシスタントで伴奏を弾いていて、こんな伴奏でいいのだろうか、どうしたらもっと歌いやすい伴奏が付けられるようになるのだろうかといつも悩みながら弾いていました。
 本書は、「対象者が気分良く歌えるように歌のイメージや気分を壊さないような伴奏法や、単調で面白みのない伴奏にならないための和音の取り方や伴奏のスタイル」「伴奏に使われるリズムパターンのポイントや練習法」「日頃歌い慣れていない人がその気になったときにも、より心地よい伴奏ができるようなコツ」「多くの音を重ねなくても、気のきいた響きに聞こえるような弾き方」等、基本的なことから、音楽を教える人達にも役立つことが書かれています。
 色々な事がすぐにできるわけではありませんが、右手はメロディー、左手は伴奏ではなく、伴奏を両手で分担するように弾くということから慣れていき、歌う人が心地よく感じてもらえるような伴奏ができるようになれたらと思います。
                                    岐阜県音楽療法士 荒居 由香
 高次脳機能障害 どのように対応するか 
                              橋本圭司 著
                                 PHP新書 740円+税
数年前、私の家族が脳血管障害で倒れ、高次脳機能障害と診断されました。初めて聞く言葉でした。
 高次脳機能障害は、脳外傷、脳卒中、脳炎、低酸素脳症などが原因で脳が損傷した後にしばしば起こる後遺症です。現在、この障害を持っている人は全国で30万人と言われています。そして、いつ自分や家族、友人が脳血管疾患あるいは交通事故などにあって、高次脳機能障害になるかわかりません。
 この本には高次脳機能とは何か、そして高次脳機能障害の原因や、「易疲労症」「注意障害」「半側空間無視」「失語」「記憶障害」「失行」その他の具体的な症状が書かれており、家族、周囲の心構えや、対応法もわかりやすく書かれています。また、著者が実践している高次脳機能障がい者と家族を対象とした集団リハビリテーション「オレンジクラブ」の活動を紹介しながら、いくつかの具体的な事例をあげてリハビリテーションの様子を伝えています。
 高次脳機能障がい者は、例えば自転車に乗るなど、自分で体験しながら覚える「方法記憶」よりも、物の名前を覚えるような「意味記憶」に問題が生じる事が多いようです。このことから、私たち音楽療法士にも楽器を使いながら、歌いながら、「方法記憶」に働きかけることで、楽しみながらリハビリテーションの手助けが出来るのではないかと感じました。
 この本で著者は「高次脳機能障害へのリハビリテーションは、低下した能力を元に戻す作業ではない、支障なく日常生活を送る能力を身につけられるようにすべき」と言っています。「高次脳機能障害は正しい評価と診断、適切な対応がなされれば改善する」という著者の言葉に勇気をもらいました。
                                    岐阜県音楽療法士 熊谷 理江
 育つ・つながる 子育て支援 具体的な技術・態度を身につける32のリスト 
                     子育て支援者コンピテンシー研究会 編著
                         (株)チャイルド本社 1,800円+税
私は、今年度より未就園児親子対象の親子遊びのスタッフとして関わる機会を頂き、その際に必要な心構えについて学べる書籍として本書を読みました。
 本書は「子育て支援者コンピテンシー研究会」の編著によるものです。コンピテンシーとは、ある職種において成果を導く上で必要な共通の知識、技術、態度のことを言います。この場合、「利用者が楽しく子育てできるよう、子育て支援者としてお手伝いをする際に身につけておくべき事」を指します。
 現代の子育てを取り巻く社会環境や問題点が提示され、子育て支援とは何をすべきか具体的に記されています。また、支援者の姿勢で大切なこととして、「支援者の固定観念は払い、人それぞれの価値観、生き方、多様性を受け入れる姿勢」、「肯定的、共感的な対応によって利用者に安心感をもたらす」などとありました。これまで漠然としていた人との関わり方が整理でき、自分の姿勢を振り返ることができました。
 子育て支援の現場では様々な親子に出会います。そうした場合に自分の価値観で枠を作らず、個性を尊重し、共感的な傾聴を心がけ、支援者としての接し方を模索していくことが大切だと分かりました。今後の活動に活かしていきたいと思います。
                                    岐阜県音楽療法士 大谷 淳子
 いのちの恩返し=がんと向き合った「いのちの授業」の日々 
                              山田 泉 著
                                 高文研 1,600円+税
 NHKの「にっぽんの現場−心に響け、いのちの授業」(2007年5月)というドキュメンタリー番組で山田泉さんを見てご存じの方もいるかもしれません。
 山田泉さんはがんの再発、転移で職場を退職し、最後にとフランスへ旅立ちます。そこでパリの芸術家達と交流する機会に恵まれ、天才チェリスト、エリックマリアと出会います。彼はがんと闘う彼女をとても気遣い、半年後に来日して音楽セラピーを行います。私はその様子を記録した映画「御縁玉」をみて、山田泉さんを初めて知りました。
 山田泉さんは養護教諭として年間100時間以上の授業を行い、がん患者となってからは患者会を立ち上げて、それまでを2冊の本に書き残されています。「『いのちの授業』をもう一度」と「いのちの恩返し−がんと向き合った『いのちの授業』の日々−」です。
 「あたしの乳ガンは、たしかにヤバイけれど…、おもしろいことが転がっている日々。そんな日々の記録ですが、良かったら読んでください。」(冒頭より抜粋) 涙なしで読むことができない内容ですが、それ以上に山田先生の語り方が上手で、笑ってしまうところも随分あります。『いのちの授業』を受けた生徒の感想文は感動的です。「すごい!子どもたちの目線に立ち、常に同じ目の高さで子どもの心と存在を受け止めようとする山田さんの姿勢に私は感動しました。」(本文より抜粋) 私はこの本でひとりの人間として驚き、感動、涙、笑いをいっぱいもらいました。また、同じように現場を持つ音楽療法士として、取り組む姿勢も反省させられました。
                                    岐阜県音楽療法士 後藤 益二
 「自閉症の子どもたち」心は本当に閉ざされているのか 
                              酒木 保 著
                                 PHP新書 660円+税
初めて自閉症児とのセッションを体験した私は、自閉症について全く無知であることに気がつきました。少しでも知識を深めたいと思い、書店でふと手に取ったのが本書でした。
 本書では、臨床心理士である著者の自閉症児たちへの実際のカウンセリングの詳細な記録を例に、自閉症に関してわかりやすく丁寧に説明されています。しかし、読後私が自閉症に関する理解よりも、もっと印象に残ったのは、著者である酒木氏の自閉症児と対峙する姿勢でした。酒木氏は関わりにあたって「自閉症児の枠組みの中で彼らと接してみること、すなわちこちらの世界に彼らを引っ張り込もうとするのではなく、いったん症児の世界に治療者が身を置きながら症児と通じ合う可能性を模索する。」と述べています。また「彼らの障害があるゆえに感じる不安や生活の不便さを自分の中に感じてみることから始まる。」とも書かれています。
  酒木氏の治療の基本にあるのは、症児の感じている辛さへの「共感」と「想像力」です。酒木氏の行っている遊戯療法と音楽療法とは手法は違いますが、対象者と対峙するという意味では全く同じです。一人よがりな関わり方のセッションで対象者を苦しめてはいないだろうか。私のセラピストとしてのあり方を考えさせられた一冊です。
                                    岐阜県音楽療法士 穴井 多佳子
 いのちに寄り添う。  ホスピス・緩和ケアの実際   
                              柏木 哲夫 著
                            KKベストセラーズ 1,440円+税
 友人が癌と告知され、「しばらくは、癌と付き合うよ」と淡々と話してくれた。それから1年10ヶ月が過ぎ、昨年11月に友人は旅立った。その時に出会ったのが本書であり、帯封に“自分らしい最期を迎えたい”とあるのが印象的であった。
 第1章「自分らしい最期を迎えるために」では、自分らしい最期を迎えるには、今からちゃんと生きていかないとちゃんと死ねない、“よき生”は“よき死”につながると述べられている。第2章「旅立つ人と、看取る人」では、患者さんの個別性に合わせた多用な療法(音楽療法、自分史療法、内観療法、アニマルセラピー、ユーモアセラピー)について触れられている。
 そして第3章「患者さん中心のホスピス・緩和ケア」では、“ホスピス”と“緩和ケア”との違いや、緩和ケアの内容について詳しく書かれている。以前、よく使われていた“終末期医療”、“ターミナルケア”という言葉は“緩和ケア”と呼ばれるようになった。
 本書によると、緩和医療は延命を目的とするものではなく、回復の見込みのない患者さんの末期の身体的苦痛を軽減することや、精神的な平穏を支えることを、専門家が出来る限りの力を尽くしてチームで対応する、とある。そしてこの考えを実践する場が“ホスピス”と言われるものであるという。
 『寄り添うとは、つらいと言われたときに「おつらいでしょうね」という気持ちでお付き合いすることです。「何かこのごろ寂しい」と言われたら「そうですか、寂しさがぎゅうと押し寄せてくるんでしょうね」と応える。これも寄り添うことです』このくだりが今でも心に残っている。自分の生き方を考えさせられた1冊である。
                                   岐阜県音楽療法士 井ノ口 洋子
 社協の底力   
                     伊賀市社会福祉協議会 編集
                               中央法規 2,400円+税
 本書では、「住み慣れた地域で、安心してその人らしく暮らし続ける」の願いを基に、伊賀市社協がどのように地域福祉を展開してきたかがわかりやすく紹介されている。
 私自身、川辺プロジェクト(社会福祉協議会との連携による)を始める前まで「社会福祉協議会」というものをよく理解していなかった。しかし、この伊賀市社協の活躍ぶりの中からは、我々がプロジェクトを進めるにあたり、参考になる具体的な事例や、他組織といかにつながっていくかのヒントを見つけることができた。
 内容は、次のような構成でまとめられている。第1部「地域ケアシステムと伊賀市社協の事業展開(地域ケアシステムの考え方、地域ケア、地域住民の活動支援、ふれあい・いきいきサロン活動事例等)」、第2部「地域の変化に対応する伊賀市社協(市町村合併と社協合併、地域福祉計画の策定等)」、第3部「求められる社協職員像、社協組織のあり方」、第4部「これからの社協機能と地域福祉実践」と多岐にわたって書かれている。
 我々のプロジェクトは、地域の方々の健康づくりに音楽療法が活用されることを目標にしており、社協をはじめとした様々な組織と関わっていかなければならない。地域の様々な組織等の地域資源を上手くコーディネートする伊賀市社協の取り組みは、我々の活動にも大いに参考になる。
                                   岐阜県音楽療法士 今井 圭太
 音楽療法の原理と実践   
              ドナルド・ミシェル、ジョーゼフ・ピンソン 共著
                            清野 美佐緒、瀬尾 史穂 共訳
                               音楽之友社 3,200円+税
 岐阜県音楽療法士の認定を受けてから数年が経ち、音楽で行う生活支援としてこれでいいのかと自問自答することが多くなった折りに、本書を手に取りました。“音楽”、“音楽療法の概念”、“アセスメント”、“治療計画”、“運動・コミュニケーション・認知・社会的情緒的技能と音楽療法”の項目ごとに音楽療法を実践する上で必要な知識(原理)がまとめられ、音楽療法で介入するにはどうするのかが事例とともに解説されています。
 事例の一つに、脳性麻痺でほんのわずかしか手足を使うことが出来ない一人の少女(10歳)の実践例が紹介されています。音楽療法士が彼女の残された機能を観察し、理学療法士、言語聴覚士等と連携を図りながら、床を蹴る瞬間に音楽を合わせていく等の支援を続けました。その結果、少女は床を蹴る動きで、自分から音楽療法士に合図を送れるようになりました。
 その他の事例や解説を読んでも、音楽療法で何を支援しているのか、何を訓練しているのかが明確に見えてきます。また、各章の終わりには復習問題として必ず質問事項が載っていますが、答えはありません。その答えを知るために、何度もこの本を読み返し考えることができます。音楽を扱って支援する専門家として勉強できる1冊に出会いました。
                                    岐阜県音楽療法士 猪野間美奈子
 医療・福祉「科学の方法」−基礎と実例で示すテクニック− 
                             足立 明 他 編著
                              医療科学社 2,300円+税
 「科学すること」とは、自分が「疑問に思ったこと」の「答えを出す」ことです。幼児も発達段階途中で、「これどうして?」とよく聞いてきます。まわりの大人がそれに答えて、子どもは好奇心や知識を広げていくのです。この幼児のように、我々も人に聞けば「答えが見つかる」こともあります。しかし、このようなやり取りだけでは、他人の言うことを鵜呑みにしてしまうことになり、真の専門性は育たないのです。
 自分で導き出した「結論」(答え)は、どのような方法や過程を経て導き出した答えなのかを、きちんと説明できないと、他人や他領域の人には理解や納得が得られないのです。
 この書籍を皆さんにご紹介したいのは、音楽療法と同様に“科学にはなりにくい”領域(哲学、医療社会学、社会福祉学、リハビリテーション学、等)の人達が、いかに自分たちの領域を“科学しているか”が書かれている本だからです。全てを読めない方も、「研究の道具としての方法」までの約60ページ(さらにはP7〜25、40〜60)を読まれることをお勧めします。
                                            所長 門間 陽子
〜理解できる高次脳機能障害〜 「脳の障害と向き合おう!」 
                             中島 恵子著
                              ゴマブックス 1,333円+税
 近年、高次脳機能障害に苦しんでいる方が増加しつつあると言われています。音楽療法の現場にも、高次脳機能障害の方がおられます。私は、高次脳機能障害の方のことを理解したいと思い、この本を読んでみようと思いました。
 高次脳機能障害とは、脳卒中、脳外傷、脳症、脳炎などの後遺症で、脳が損傷されて現れる症状のことです。損傷された脳の部分によって、いくつかの障害を合併することもある高次脳機能障害を理解することは、とても難しいことです。目に見えにくい知覚、記憶、思考、判断、学習などの機能障害に本人や家族はとまどい、周囲の人々からは誤解を受けてしまうこともあります。
 本書は、実際に高次脳機能障害への訓練に携わっていた著者によって、家族や周囲の人にも理解できるよう、脳の部分の働きや、高次脳機能障害の具体的な症状やそのリハビリ法などが、分かりやすい文章とイラストで解説されています。高次脳機能障害について知りたい、理解したい、という方には、入門書として是非お薦めしたい
一冊です。
                                       岐阜県音楽療法士 加知 郁子
「ひとと音・音楽」療法として音楽を使う 
                      
山根 寛・三宅 聖子著  山根 寛編
                                   青海社 3,200円+税
 日々の暮らしの中には、自然音、生活音、音楽等があふれています。時には音・音楽により安らぎを覚えたり、健康を回復することがあります。私は、人と音楽との関係を知りたいと思い本書を選びました。
 本書は、音楽を療法として用いるという視点で書かれています。作業療法士である著者と音楽療法士が、人と音楽の関係、音楽を用いる療法の治療構造、音楽の効用、適応と対象、プログラムの進め方と評価、具体的な事例について述べています。
 人と音・音楽が、日本の風土、歴史、地理、文化、日本人の生活等の中で、深いつながりを持っているという事が丁寧に書かれている一冊です。
 音楽を療法として用いようとしているコ・メディカルスタッフの方々にも興味、関心を持っていただけると思います。そして、音楽療法をより深く知ることが出来ると感じました。

                                       岐阜県音楽療法士 西山 仁美
「障碍の児のこころ  関係性のなかでの育ち」 
                           田中千穂子著
                            発行 ユビキタス・スタジオ
                            発売 KTC中央出版 1,800円+税
 著者は心理臨床家として、障碍のある子ども達の発達援助に取り組んでいる。
 知的障碍がある子のこころの叫び、また知的障碍のある子どもとその親の悩みや気持ちの変化が、発達援助の事例から見えてくる。
 自分と人を比べる以前に、自分が自分にがっかりするという体験がある。著者によると、「ひけめ」という感情は、自分と対象との二者関係の中に自然とわき起こってくるものであると述べられている。そして、その「ひけめ」という感情が次第に、周囲の親や大人との関係性の中で「劣等感」に育っていってしまうというのは、障碍の有無や年齢に関わらず誰にでも生じる感情であり、深く考えさせられた。
 知的障碍のある人々が生きやすい世の中は、知的障碍のない人々にとっても生きやすい世の中であるはずだ。しかし、彼らに対するこころの援助はまだまだ十分ではない。音楽療法士として、彼らのこころの育ちとその傷つきに関する理解を深め、音楽療法のねらいの意味を明確にし、音楽を使った適切な援助を考える時に参考になる本である。

                                          岐阜県音楽療法士 二ノ宮典子
 「「尊厳を支えるケア」をめざして 失敗事例から学ぶ50のヒント」 
                          総合ケアセンター サンビレッジ編
                                  中央法規 2,000円+税
 長良川セミナーで基調講演をしていただいた石原美智子氏が理事を務める、社会福祉法人 新生会が、高齢者の地域福祉ひとすじに取り組んでおよそ30年がたった。本書は、これまで歩んできた30年を「尊厳を支えるケア」を視点に、今まで関わってきた多くのスタッフが、「日常のケア」「認知症のケア」「住まいのあり方、暮らし方」「人づくり」「地域の実践」について事例をあげている。そのほとんどが失敗や悩みの事例であり、「失敗・悩み」から学んだことが、簡潔な言葉で「ヒント」と銘打って書かれており、読者の私達に「尊厳を支えるケア」の本質を投げかけてくれる。スタッフは、高齢者が「自分の人生を自分の意思で決定し、生きていけるように」、「人生の最期まで豊かに過ごせるように」、一人一人の価値観を大切にしながら、その人や家族の立場に立ってチーム全体で考え、行動している。真摯に取り組んでいるその様子を読んで、音楽療法士として高齢者の理解のために努力を怠っていないか、チームで取り組む重要性を理解しているのかについて考えさせられる貴重な一冊でした。

                                              研究員 猪野間 美奈子
「音楽で脳はここまで再生する  脳の可塑性と認知音楽療法」 
                          奥村 歩著 
                          佐々木久夫構成・編
                                  人間と歴史社 2,200円+税
 本書は、岐阜県音楽療法士の行う脳リハビリテーションに感動した医師である著者が、「医療現場における音楽療法」について脳科学の視点から書かれたものです。交通事故によって脳の機能を失ってしまった患者さんを対象とした「認知音楽療法」のセッションの様子と回復プロセスを中心に、認知音楽療法の理論的背景と臨床上の効果の判定について、脳科学的手法を用いて説明されています。
 「遷延性意識障害」「高次脳機能障害」「認知症」「うつ病」「PTSD(心的的外傷後ストレス障害)」の方々に関わりのあるGMTの皆さんにお勧めの一冊です。


                                     研究員 佐川 和代

 第4章「認知音楽療法のメカニズム」では、認知機能と認知音楽療法について書かれています。音楽は聴覚、振動、触覚刺激などを同時に脳に送り、自分自身の演奏、発声により身体自身が生み出す刺激も脳に伝わります。さらに音楽の特徴、音楽と結びついた記憶によって引き起こされる情動も刺激となり、脳に作用します。そして音楽は、音色、リズム、ピッチ等を自在に変化することも容易で、変化する脳の状態にあわせ、より効果的な刺激を強調したり、新たに加えたりすることができます。このように認知音楽療法は、“音楽する脳”のタフさを利用し、脳機能の拡大や再生を図ると書かれています。

                                  岐阜県音楽療法士 熊谷 理恵

 医学的な検証を基に「広域で複雑なネットワークを持つ“音楽する脳”は、損傷にさらされても残存する機能を持ち、その回路にシナプスの可塑性による新ネットワークを再形成できる」とあり、患者さんやご家族、音楽療法士にとって大きな励みとなります。また、認知音楽療法を行う最大の目的は、「患者さん自身が、幸せになるためにはいかに行動すべきかと判断をしてゆく“認知過程”の活性化である」とあります。私達は、音楽を使って多種の感覚を刺激しつつ、患者さんと楽しむことを共有し、“認知過程”をよく観察しながら音楽活動を行っていくことが大切であると再認識しました。

                                  岐阜県音楽療法士 堀江 勢津
「ヘレン・ケラーはどう教育されたか〜サリバン先生の記録〜」 
                          サリバン著 (遠山啓序・槇恭子 訳)
                                  明治図書 1,420円+税
 ヘレン・ケラー自身による著書は、これまでも多くの人によって読まれてきたが、本書は教育を受ける側ではなく、教育をする側であるサリバン先生からの記録である。
 サリバン先生は、盲・聾・唖の三重の障害を持った6歳のヘレンとの出会い以来、話かけるように彼女の手に文字を綴り続けた。そして、ヘレンに知的な進歩を促し、周りの物に興味を持たせることに尽力した。やがて、ヘレンの興味はサリバン先生を通して物から人へと広がり音声言語を一つずつ習得していった。
 このように本書では、ヘレンが主に言語を獲得し、会話が出来るようになった過程が描かれている。初期には、自分の意思を伝えられず感情を爆発させるヘレンと取っ組み合いの喧嘩をするような赤裸々なやり取りもあり、先生の試行錯誤が覗える。先生がヘレンから大きな信頼を得ていく過程には、多くの困難と忍耐が必要であったことを本書は伝えている。どのページを開いても、ヘレンに対する愛情の深さに感動し続ける一冊である。

                                   岐阜県音楽療法士 樅山 幸代

「すべては音楽から生まれる」 
                          茂木健一郎著
                                  PHP出版 680円+税
 私はこれまでの人生で、音楽に出会えて、本当に良かったと思っています。音楽は私の人生の時々において、私を包み込み、私の内面にじっと耳を澄ます時間を与えてくれました。そして、一歩を踏み出す勇気を与えてくれました。この本の中で、作者も同じようなことを言っています。
 脳内が良い音楽で満ちているときには、泉のように良い発想が湧いてくるのだそうです。演奏会場を出る聴衆の上気した表情には、人の心の中の最も美しいものが表れていると書かれています。
 近年になり、脳の動きがかなり解明されてきました。この本の中でも、「音楽で脳がどのように動くのか」を脳科学者である著者が解き明かしています。そのような部分では、多少難解な部分のありますが、「音楽による多くの感動体験を重ねること」の意味や大切さが書かれている部分には、共感するものがありました。そして、我々はそのような感動体験を提供し続けることのできる療法士でありたいと願った一冊でした。

                                   岐阜県音楽療法士 船戸 マユミ
「子どもの世界をよみとく音楽療法
   〜特別支援教育の発達的視点を踏まえて〜」 

                          加藤博之著
                                  明治図書 2,400円+税
 本書は、子どもの音楽療法を行っている現場の「ここが知りたい」という声をもとに、アセスメント・目標設定・実践・評価の方法を、多くの具体的な事例を交えてわかりやすくまとめられている。
 著者は、子どもを知りたいという気持ちを強く持つこと、子どものペースに合わせること、肯定的に関わることが、子どもとの豊かな関係作りにつながっていくと語っている。著者が実際に音楽療法を行っているCD−ROMが付いており、子ども達がのびのびと音楽活動を行っている姿や、行動観察や保護者の話から得られるアセスメント票や音楽活動の評価表等も収録されている。
 また、乳幼児の発達(身体・運動(粗大、微細)、認知、コミュニケーション・言語、対人関係・社会性)について、発達レベルに応じた効果的な音楽の用い方が書かれている。子どもの音楽療法を実践されている方にお薦めの一冊である。

                                   岐阜県音楽療法士 川上 香奈子
「声・身体・コミュニケーション 〜障害児の音楽療法〜」 
                          土`野研治著
                                  春秋社 2,100円+税
 「音楽において“コミュニケーション”は、最も重要で基本となる営みである。それは声や楽器を介してだけでなく、表情や身振りなど身体を通して行われる。この営みをセラピストとしてどのように捉え、コミュニケーションを繋げていくのか。」 冒頭このように書かれているこの本は、障害児の音楽療法を行う者として、ぜひ一度は読んでおきたい本である。障害の種類や障害児を取り巻く環境、障害児教育の歴史等、障害児を知るために必要な情報について書かれた後、セッションの手順、楽器、声、身体運動、コミュニケーションなどについてエピソードや事例も含め詳しく書かれている。
 また、後半ではこの本のテーマであるコミュニケーションについて“子どもの発達”という視点から述べられており、これから実践を始めようという人達にとっても、現在実践を行っている私達にとっても、子ども達とのやり取りの中で強い味方となる一冊である。

                                   岐阜県音楽療法士 水野 千春
「リズム、音楽、脳」
   〜神経学的音楽療法の科学的根拠と臨床応用〜 

    マイケル・H・タウト著(三好恒明・瀬島 敬・伊藤 智・柿崎次子・糟屋由香・柴田麻美 訳)
                              共同医書出版社 5,000円+税
 神経学的音楽療法とは、米コロラド州立大学のタウト博士らにより確立されたリハビリテーションシステムである。音楽の要素の一つでもあるリズムの影響力を神経学に照らし合わせて証明し、パーキンソン病、脳血管障害、外傷性脳損傷、失語症、認知症などによる感覚運動、言語、認知の機能不全に対し、治療的に応用している。
 前半では、リズムや音楽が脳の中でどのように伝達、処理されているか、また、身体を動かした時に生じる感覚や動きのコントロールにどのような影響を与えているかを、医学、物理学を使って説明している。後半では、感覚運動、言語、認知リハビリテーションにおける神経学的音楽療法の新しい治療法を紹介している。
 難解ではあるが、今私達が求められている科学的根拠に基づいた音楽療法を実践する上で、大きな力になってくれる本ではないかと思われる。

                                   岐阜県音楽療法士 鈴木 保子
 「精神看護学ノート」 
                         
武井麻子著
                                 医学書院 2,100円

 音楽療法士は、音楽を使って人と係わる職種ですので、対象を理解する事がまず前提だと思います。精神障がいとは、人間であれば誰でも体験する可能性があること、その人の生きるプロセスなのだということを本書を読んで理解していただけると思います。
 本書は、日常生活での出来事が原因で精神疾患に至る経緯について、様々な視点で書かれています。音楽療法士が音楽を使って支援をしていく中で、自分の実践内容や方法に迷ったとき、吟味したいとき、この書籍が示唆を与えてくれると思います。
 時間の無い方には、ドラマや映画、書籍などから対象を知る動機付けとなるような、小コラムもあるので、そこから読み始めても得るものは大きいと思います。

                                   岐阜県音楽療法士 乙村 優

  「音楽療法ケーススタディ(上) 児童・青年に関する17の事例」 
   ケネス・E・ブルシア編(酒井智華・よしだじゅんこ・岡崎香奈・古平孝子訳)
                                 音楽の友社 2,800円+税
 ケネス・ブルシア編による『「音楽療法ケーススタディ」(上)〜児童・青年に関する17の事例〜』を紹介する。児童の音楽療法にかかわっている私にとってこの本は、自分一人では知り得ない世界を拡げてくれた。
 第1部「音楽療法実践の基礎」は、音楽療法入門者のみならず、音楽療法士が自分の臨床の内容を整理したい時に大いに助けになってくれると思う。第2部、3部では、17の事例について記載されている。形式は概ね統一されているものの、実に多様なアプローチと信念を持っており、個々の対象者のねらいに対応する音楽療法の幅広さが感じられる。例えば、重度の火傷を負った事例に対しては、閉ざしてしまった心を解放する助けとして使用する人形と音楽、大運動を高めるために補強具をつけた楽器、小運動を高めるためのギターを用いた音楽療法の手法などである。
 これらは実践例として参考になるばかりでなく、まさにブルシアによる「重要なことは療法士がセラピーの目的に沿った音楽体験を選択し、構想を練ること」を思い起こさせ、我々の臨床を充実させてくれる本だと感じた。                                      

                                  岐阜県音楽療法研究所 水野 智美
 「音楽する人間」
  〜ノードフ・ロビンズ創造的音楽療法への遙かな旅〜

                         クライブ・ロビンズ著(生野理花訳)
                                 春秋社 3,200円+税
題名から想像したときは、クライブの音楽に関する哲学的な考えが記載されている本だろうと読み始めた。初めの数章は確かにそのようなことが書かれている。しかしその後は彼がその考えに至るまでに出会った子どもとのこと、ノードフをはじめとして様々な音楽人、福祉関係の人、考えかた、学問との出会いの中で音楽療法が創造されていく過程が書かれている。その中には、クライブのプライベートな人間関係の葛藤や出会い・別れ、喜び・哀しみが織り混ざっており、現在の偉大なクライブしか知らない人にとっては、我々と同じような苦労を経た上で、現在の彼がいることを知らされる内容であった。
 私達と大きく異なる点は、自分の力、相手の力、音楽の力を信じ切って、その時々に出会った人や考え方を統合したり、応答的な音楽の構造を明らかにしたり、関連領域の最新の学問を吸収しながら、色々な人とプロジェクトを組み、とにかく広い世界を見つめて歩んできた取り組みに、大きな違いを感じた。しかしそのような彼でも、セッションは幼い自閉症児たちとは「綿密に焦点をしぼったアプローチ」を行い、多様性をもった発達障害児には、また異なるアプローチをしながら専門職としての、この世界の道を地道に作り上げ、そして人材を育ててきた歩みが読み取れる。
 DVDも付いているので、ノードフとのやり取りを知る貴重な映像や、文章で表現しきれない音楽やこどもとの関わりが体感できる構成になっている。(各場面の解説は本に記載)
 この本はどのような段階にある音楽療法士にも、今、自分が学んでいること1つ1つが、「このように統合されていくであろう」というような、未来に向けての勇気を与えてくれる一冊ではないかと思われた。

                                  岐阜県音楽療法研究所長 門間 陽子
  「音楽療法のすすめ」〜実践現場からのヒント〜
                        小坂哲也・立石宏昭 編著2006年
                               ミネルヴァ書房  2,200円

 基礎編では音楽療法の歴史的背景、定義、理論、実践編では実践現場の様子が対象者別に6つの分野について記述されています。いかにわかりやすく実践のポイントを捉えるかに重点が置かれており、音楽療法の流れ、事例、プログラム例、他職種との連携などについて、具体的に紹介されています。
 また、他職種が音楽療法に期待していることとして「きちんとした知識をもった音楽療法士が、音楽の特性を活かし、対象者の苦痛を取り除き、その人らしい良さを伸ばして欲しい」などと書かれており、改めて音楽療法士としてのあるべき姿を考える機会にもなるのではないでしょうか。

                                      岐阜県音楽療法士 羽山 園美
  「音楽療法士のためのわかりやすい 医療用語ハンドブック」
                                 大塚 裕一 著
                               あおぞら出版社  1850円

 音楽療法の現場で、看護師やコ・メディカルスタッフなどの他職種が使う独自の用語に困惑したり、悩んだことはありませんか?この本はそんな音楽療法士たちの勉強会から生まれた一冊です。
 本書はA.病院・施設関連用語 B.コ・メディカル関連用語 C.病歴関連用語 D.疾患障害用語の4項目に分類され、わかりやすく解説してあります。医療用語を知る導入書として基礎的な用語から略語、カンファレンスや臨床の現場で飛び交う用語や略語の235語が掲載されています。
 また本書から、1.医療の役割と音楽療法のつながり、2.チームとしての他職種の仕事、 3.音楽療法士に求められていること、4.共通用語を使ったコミュニケーションについての示唆も得られます。他職種とのコミュニケーションの活性化や、最低限の知識を共有するために役立つ一冊です。

                                      岐阜県音楽療法士 林 友子
  「失語症の人と話そう」       
                               荘村 多加志 著
                      中央法規出版株式会社   2200円+税

 失語症とは、脳血管障害や事故などの後遺症によって、言葉をつかさどる脳の一部に障害が残った状態をいいます。
 本書の第1部では、失語症とはどういう障害なのか、失語症になる原因や大脳の働きと言語野、失語症の特徴、タイプなどについて、第2部では失語症の人とのコミュニケーションは実際にどのようにすればよいかが習得できるように、基本的態度や言葉かけの方法を多くの「具体例や問題と練習」で書かれています。
 失語症の人は、話す・書くという表現の手段や、読む・聞くという理解する能力が障害されます。また、数字は聞くよりも見る方が理解しやすいそうです。
 また、一口に失語症といっても、大脳の損傷の場所と大きさによって言語障害の症状や重さに違いが生じるようです。
 失語症について全く知らない方は第1章から、すでに失語症について勉強されている方はコミュニケーションのとり方や工夫が紹介してある第4章から読まれると良いかと思います。イラストが多く使われ、具体的で分かりやすいおすすめの一冊です。

                                      岐阜県音楽療法士 柏 惠子
  「もの忘れ外来」の現場から
    ボ ケ な い 技 術 ( テ ク ) 」
  
                                 奥村 歩 著
                        2007年 世界文化社 1400円+税

 日本認知症学会によると、認知症は「脳や身体の疾患を原因として、記憶・判断力などに障害が起こり、普通の社会生活が送れなくなった状態」と定義しています。著者が担当している「もの忘れ外来」の現場からは、年相応の「良性のもの忘れ」なのか、アルツハイマー病などの前兆の「病的なもの忘れ」なのかが読者にも区別出来るように、診察の手順や心理テストの一部を載せる等して詳しく紹介しています。

 最新の科学論文から、日常生活に無理なく取り入れられる坐禅・散歩等の8つのボケない技術の紹介に加え、認知機能を理解する上に必要な脳の構造や働き、脳の記憶のメカニズム、脳内物質等の医学的な知識が図解入りで書かれています。また、認知機能の統合力である「結晶性知能」や「メタ認知」等、人間の認知機能に対して障害を起こす認知症の基本的な知識についても書かれてあり、これからの音楽療法士の専門性に必要不可欠な知識だと思います。

 音楽活動が持っている認知症予防効果に期待して、著者が担当している木沢記念病院の「もの忘れ外来」と岐阜県音楽療法研究所が、軽度認知障害(MCI)を対象に、「認知症発症予防を目的とする音楽療法」のプロジェクトを立ち上げ、音楽療法を実施していることも紹介されています。

 高齢者の音楽療法に携わっている方にとって、認知症の知識と理解を深める為に音楽療法士の必読書としてお薦めします。そして家族の認知症予防の常備冊として家庭の医学書の隣に添えてみてはいかがでしょうか。

                                      岐阜県音楽療法士 黒田 暁子
 「音楽療法士のためのABA入門
   〜発達障害児への応用行動分析学的アプローチ〜」
  
                      中山 晶世・二俣 泉・竹内 康二 著
                                  春秋社  2,000円

 「ABA」とは、「応用行動分析学」(Applied Behavior Analysis)のことで、行動を分析し、ある行動が生じる原因(条件)を、特定の行動を改善するために適用し、その効果を明らかにしていく学問体系です。もう少しかみ砕いて説明すると、基本的に「子どもを悪者にしない」のです。子どもの側に原因があるのではなく、「周りの人の教え方や環境から問題が引き起こされる」と考え、「教え方や環境を改善することに力を注ぐ」というように考えていくのが応用行動分析学という学問だそうです。

 本書は応用行動分析学そのものを解説した本ではありませんが、音楽療法場面で子どもの行動をどのようにとらえ、そのような時に音楽をどのように使うかが具体的に示されていて、障害児のセッションの様々なヒントやアイデアも得られます。また、巻末には参考文献のリストも分野別に記されていますので、さらに知識を深めたい方にも参考になる一冊です。

                                      岐阜県音楽療法士 長尾 恵里
 「認知症の知りたいことガイドブック」               
                                  長谷川 和夫 著
                               中央法規  1600円+税

 認知症は、「いったん獲得した知的機能が、脳の器質的障害によって持続的に低下し、日常生活や社会生活が営めなくなっている状態」と定義されています。
 本書は認知症について多くの方に理解してもらおうと、医学・医療のことから介護サービスの利用法まで大変読みやすく書かれています。なかでも認知症の方の心理・特有行動の理解として、自分を失っていくという喪失感と大きな不安をかかえている、その気持ちを受容して接していくことの大切さが伝わってきます。
 認知症の方と接するときに、アイコンタクトやスキンシップなど非言語を利用するとコミュニケーションがとりやすい、という点は音楽療法にも通じるものだと感じます。「認知症について知りたい」と願う方の入門書としておすすめの本です。

                                      岐阜県音楽療法士 井上 富枝


 この本は幅広く認知症の人の環境をとらえて書かれた家族向けの本と思われます。GMTの皆さんがもう一歩、専門家として踏み込んだ知識を得る為には、「認知症診療のこれまでとこれから」(長谷川和夫:著)のような本を読まれることをお勧めします。
                                                所長 門間 陽子
 「はじめようピアノで音楽療法(福祉現場の最前線から)」
                                  猪之良 高明 著
                            (株)ショパン発行 1500円+税

 音楽療法は、その場やその人にあった音楽の提示が求められます。ピアノや鍵盤楽器は、広い音域によって多彩な和音やアレンジをすることができ、対象者の方の音楽を支えるのに適した楽器です。
 本書は音楽療法に興味がある方、福祉施設や病院に勤務する職員、ボランティアの方を対象に書かれています。具体的にはブルミューラー25番程度の方を基準として、実践のための知識とピアノ演奏を通して音楽技術が独習できるようになっています。
 項目が細かく分かれているため理解しやすく、著者の経験談も取り入れながら分かりやすい言葉で書かれています。

 知識や技能を習得することは大切ですが、援助を必要とする人たちにとってまず「音楽療法が楽しいこと」であるべきとも書かれています。本書を参考に音楽療法の時間が心地よいものであり、その人が持っている本来の力や気持ちを自然に引き出せるような活動をしていきたいと感じました。イラストも多く読みやすい1冊です。入門書としてお薦めします。

                                      岐阜県音楽療法士 寺澤 貞子
 「自閉症ガイドブック シリーズ2 学齢期編」    
                           社団法人 日本自閉症協会
                                           700円

 障害の中でも、とりわけ自閉症といわれる子どもたちについて学びたいと思い、本書を選びました。

 自閉症児、者の様々な情報が取り巻く中、本書の「自閉症の特性」では、代表的な症状、原因、自閉症と間違われやすい障害が挙げられ、学齢期における特性、何をなすべきかが簡潔に書かれています。
 また、就学にあたっての学校の選び方や親としての心構え、学齢期における指導・支援の方法と実際、座談会形式での今後の自閉症教育に向けた問題提起と展望、思春期への対応など、8項目から書かれています。
 親の思いや家庭生活での数々の工夫、学校側の真剣な取り組みなど、35のコラムを紹介しつつ、子どもを取り巻く家庭・学校・地域・医療や福祉専門機関の連携の重要性を強く訴えています。

 本書の「成人期から学齢期を振り返って見て大切にしたいこと」に書かれてあるように、音楽療法を媒介に子どもたちと関わる期間だけを見るのではなく、子どもたちの将来における社会生活の営みを広く視野に入れ、小学校高学年前後の大切な時期に、進学、就労など次のステージに移行する為のアプローチが必要不可欠であると思いました。

 高機能自閉症を含む自閉症児との音楽療法での関わりが増えつつある現在、発達段階の大きな転機となる学齢期にどのように関わればよいのか、参考になる一冊です。

 本書は、一般の書店では取り扱っておりません。購入を希望される方は、直接、日本自閉症協会にメールまたはfaxでお問い合わせ下さい。
 本部メールアドレス asj@mub.biglobe.ne.jp
 本部Fax 03−5273−8438

                                      岐阜県音楽療法士 右 せつ子
 「自閉症を克服する〜行動分析で子どもの人生が変わる」  
                 著 リン・カーン・ケーゲル  クレア・ラゼブニック
                          監修 中野良顕  訳 八坂ありさ
                                  NHK出版   2,600円

 本書の著者、臨床家であるケーゲルと自閉症の子どもを持つラゼブニックは、共に女性であり母親でもあります。「自閉症には奇跡の治療法も、一夜にして結果が出ることも絶対にないと言われているが、長年にわたるリサーチと科学的な探求に裏打ちされた効果的ですぐれた介入法がある。それを実践してほしい。」と著者らは語っています。

 本書は8章に分かれ、自閉症の行動特性を中心にまとめてあります。親や自閉症の子どもに接する人が抱く疑問に対して細やかに答え、良い手だてを見つけ出した母と子の体験が語られています。
 また、プラスの行動を強化することによってマイナスの行動を減らしていく行動分析により、どの章もその時の子どもに沿った望ましい介入方法がわかりやすく書かれています。
 本書は、読者が特に気がかりな章から読むことも可能であり、自閉症のみならず子を持つ全ての親や自閉症児に係わる音楽療法士に最適なガイドブックです。

                                      岐阜県音楽療法士 高野 郁子
 「ホスピスケアと緩和ケアにおける音楽療法」             
                   著 スーザン・マンロー  訳 進士 和恵
                                 音楽之友社  1600円

 人生の終末期にある方々への音楽療法について勉強したいと思い本書を選びました。

 第1部は、緩和ケアサービスにおける著者の率直な疑問や懸念、患者に対する献身的で真摯な姿勢が、5つの事例と考察から伝わってきます。

 第2部は、「音楽療法士」としての再定義、音楽の可能性について書かれています。
 緩和ケアにおける音楽療法士は、常に、患者に対する情緒的な関わり方と、臨床的な知識に基づいた専門家としての関わり方のバランスに配慮します。
 そして、そこで使われる音楽は情緒と結びついた象徴的な言語、場所、時代等、患者の人生において数々の特別な意味を持っていると書かれています。

 本書を通じて音楽を慎重に使うことの重要性、そして、著者のように失敗をしてもそれを乗り越えるために患者の気持ちに添った援助を考えていくことが音楽療法士としての成長である!と勇気を与えてくれる1冊です。

                                      岐阜県音楽療法士 猪野間美奈子
 「安心して絶望できる人生」                        
               向谷地生良著 浦河べてるの家  生活人新書 199
                              NHK出版 本体740円+税

 本書は、統合失調症などの対象者理解を深めるための本というだけではなく、ひとりの人間として、ひとりの音楽療法士として、自分という視点で物事を考えられるようになるためのきっかけやパワーをもたらしてくれるお勧めの一冊です。
 北海道にある浦河べてるの家は統合失調症などを抱える人たちが暮らす共同体です。
 本書は、べてるの家の統合失調症などを抱える当事者が、仲間や関係者と共に自らの抱える「生きづらさ」や「生活上の課題」を、「研究者」という視点から解き明かしていく「当事者研究」という独自の試みについて3部構成で書かれています。

 第1部 自分自身で、共に ―弱さを絆に苦労を取り戻す―
 「精神障害者だからと心配されるばかりの人生ではなく、自分らしい苦労が全うされる人生を取り戻す」「非援助の援助、助けないという助け方」など、べてるの家が大切にしてきた生き方についてさらりと書かれています。

 第2部 「弱さの情報公開を始めよう」―「当事者研究」の実際―
 当事者自身が自分の実感を基に「自己病名」を掲げ、生活上の生きづらさを仲間と共に「研究」し、切実な問題を解明・解消していこうとする試みが、弱さの情報公開=事例研究という形で分かりやすく紹介されています。

 第3部 苦労や悩みが人をつなげる ―座談会「私たちにとっての当事者研究」―  
 べてるの家の当事者と、べてるの活動を見守ってきた精神科医、看護師、ソーシャルワーカーら専門家による、当事者研究の意味や波及効果についての座談会の様子がどこまでも前向きに、ユーモラスに書かれています。
 難解な医学書に書かれてある精神疾患の説明が、「当事者研究」という切り口でとても分かりやすく書かれてある1冊です。

                                                研究員 佐川 和代
 「抄録の書き方」                         
 
(わかりやすい学会発表をするために)
               日本音楽療法学会 研修・講習委員会編
                                  価格1,000円(送料別)

 日本音楽療法学会研修・講習委員会が企画した講習会(2005年2月)のシンポジウムを契機にこの冊子が作られました。「査読の基準をもっと明確に」ということがこの企画の背景にあるようです。

 内容を見ていきますと、この学会で発表する場合(学会誌の査読が通るための内容ではありません)に、最小限、必要なことが書かれています。
 GMTの皆さんと勉強を進めている内容と多少異なりますが、「私たちが所属している学会が判定をする場合はこのようにしています」ということですから、皆さんが学会に提出をする抄録等を書く場合の参考にしてください。

 お勧めのポイントの一点目は、「音楽療法の人が抄録を書く場合」となっているだけあって、音楽療法の人には、関係深い内容となっています。
 二点目は例の示し方がよいモデルだけではなく、「よくない例は、どこが、どのようにまずいのか、それを修正して書くと、このようになる」ということが幾つかの例で、具体的に書かれています。

 研究所で示している内容と多少異なると書いたのは、研究所の事例の書き方は、あくまで「県民にわかる」「関係職種の人や家族にわかる」「本人にも理解できる」事に主眼を置いています。しかし、基本的骨組みは同じです。

 今後、学会で発表や、認定の申請を希望している皆様には、必見の冊子でしょう。


<購入方法> 
 学会事務局に直接申し込む(240円分の切手を貼付して宛先明記したB5サイズの返信用封筒と1、000円の定額為替を送付する)。
 または、学術大会や講習会等の書籍販売の際に購入する。

 「音楽家のための身体コンディショニング」           
  〜ベストな状態で演奏に臨むために〜
           エステル・サルダ・リコ 著  音楽之友社 2006
 この本は音楽演奏者、音楽教育者、また音楽療法士や医療関係者など、音楽に関わる様々な人達に向けて『音楽と身体』というテーマに基づいて書かれています。理学療法士であり楽器演奏に関する生理学の研究者である著者が、音楽を演奏する際の姿勢や呼吸、演奏家の精神面に至るまで、必要且つ知っておきたい知識を幅広く、そしてとても丁寧に述べています。

 第一部 理論編:身体のしくみに関して解剖学の基本部分が易しく解説されています。
           また音楽演奏の際の身体の動きについての解説もなされています。
 第二部 実践編:楽器演奏の際のウォーミングアップや、各種楽器毎に必要なストレッチ方法が細かく
           丁寧に図を用いて紹介されています。

 この書籍では難しくてつい敬遠しがちな身体に関する解剖学の知識もとても分かりやすく書かれています。また知識そのもののみではなく、『音楽と身体』という観点から書かれている為、音楽と人に関わる音楽療法士にとっても必要な情報が得られるものと思います。

 今後、音楽療法の現場で理学療法士の方や医療関係者の方達とチームを組んで活動する機会も益々増えてくるものと思います。対象者理解、人間理解への一助となる一冊です。

                                           岐阜県音楽療法士 加藤玲子
 「ケアの思想と対人援助」
  〜終末期医療と福祉の現場から〜
           村田久行 著  川島書店
 村田先生は、対人援助論、福祉原理、哲学などを専門分野とされ、独自の哲学に基づいて「傾聴ボランティア」と呼ばれる対人援助のユニークな方法を開発し、広めたことで知られております。
 この本では、患者・クライエントの心配・気懸かりを「引き受ける・担う」という発想から、従来の援助に対する考え方を見直し、人間の「苦しみの構造」に焦点をあてて書かれています。
 「音楽療法士3つのオキテ」
           二俣 泉 著  2004年  音楽之友社
 この本では、「実践現場のオキテ」「対象児の親支援のオキテ」「音楽療法士の成長のオキテ」と3つのオキテが書かれています。

 「実践現場のオキテ」って?
 最近、音楽療法に関わる仕事をしていく中でとても大切なことに気付きました。実践現場で、他職種の人々とどのように接していったらよいかということです。自分と向き合っている対象者だけに力を注いではいないでしょうか。
 このような私にとても助けになる本でした。読んでいくうちに、どれも心当たりのあることばかりで、現場での自分のふるまいはどうだったかと、振り返らざるを得ませんでした。

 「音楽療法士は自信よりも謙虚さが、専門性よりも視野の広さが、主張性よりも聞き上手であることが大切である」と書かれていました。他職種の人との良い関係づくりが音楽療法の「質」をあげることに繋がるということです。

 第1章では、現場でのやり取りの「コツ」が細やかに書かれています。二俣先生からの厳しくも温かいエールを受けながら、自然と勇気が湧いてくる一冊です。

                                         非常勤嘱託研究員 日比あけみ
 「知的障害のある子どもへの音楽療法」
  〜子どもを生き生きさせる音楽の力〜
           遠山文吉 編著   明治図書 2005年
 サブタイトルの 〜子どもを生き生きさせる音楽の力〜 という言葉に惹かれ読み始めました。読み進めていくうちに、著者である遠山先生の子ども達に対する愛情が一文字一文字から溢れ出し、私の心がどんどん優しくなっていくのを感じました。

 本書は、前半に《理論編》として音楽療法や知的障害児の概念、知的障害児に対する音楽療法の基本、諸技術、配慮事項が書かれ、後半では施設や学校等で実践を行っている、15名の音楽療法士による、幼児、児童、生徒、及び成人に対する個人音楽療法と集団音楽療法の事例報告、またその論文に対する遠山先生のコメントが書かれています。

 これから児童の音楽療法を行う方には、わかりやすく実践までに必要な項目が理解でき、現在実践を行っている方には、理論的に実践を見直すことができます。

 遠山先生は【私は「子どもから学ぶ」という言葉を大切にしながらかかわりを続け、たくさんの学びを得てきた】と述べています。私たち実践者が生き生きしてこそ、子どもたちも生き生き出来るのだと感じた一冊でした。

                                          非常勤嘱託研究員 神山稚加
 「臨床の知とは何か」 
           中村雄二郎 著 岩波新書 1992
 今年11月12・13日(土・日)に行われる長良川セミナーのテーマは「臨床の知から学ぶ音楽療法」です。

 音楽療法の実践を行った後には、自分の実践を記録・評価をしたり、事例検討のために整理したりする作業があります。その現場で起こったリアルな現実をどう捉えるかは常に考えていかなければならない問題です。事実だけを客観的に見ていきたいのですが、セラピストは冷静な観察者となりえず、自分の関わり方一つで事実は動いていきます。またそこで起こった事実の解釈は一つではなく、対象者一人一人の持つ固有の世界を理解する必要があります。

 中村はこの本の中で、「科学の知は、抽象的な普遍性によって、分析的に因果律に従う現実に関わり、それを操作的に対象化するが、それに対して、臨床の知は、個々の場合や場所を重視して深層の現実に関わり、世界や他者がわれわれに示す隠された意味を相互行為のうちに読みとり、とらえるはたらきをする。」と述べています。

 少々難解な哲学書ですが、不確実さ・あいまいさをともなう音楽療法の実践を考える上で学ぶことが多くあります。
                                           非常勤嘱託研究員 谷口祐子
 「故障した脳」 〜脳から心の病をみる〜
          ナンシー・C・アンドリアセン著
          岡崎祐士、安西信雄、斉藤治、福田正人、共訳(紀伊国屋書店)
  私達が音楽で対象者の方々と関わる時、対象者を理解することは必要不可欠ですが、 この本の著者は「ごく平均的な人々が精神疾患の身体的、生物学的原因を理解する助けになればというのが第一の理由」と記しています。

 近年、脳の科学は飛躍的な進歩をとげていますが、本書は「心の病い」は精神を司る脳が何らかの原因で故障したためにおこるという考えによって書かれています。
 とかく、このような医学的な専門書は、無機質で難解な言葉が多く、医学分野以外の読者にとっては、なかなか馴染めないことも少なくありません。しかし本書は、専門的な内容でありながら、著者の暖かな人間性が溢れるような、心地よい読みやすさがあります。彼女自身この本を書く目標について「私は少しでも良いもの、良いことも悪いことも真実をありのままに伝え、しかも混同や曖昧さにつながる特殊な言葉を避けた、私自身が読みたいと思っていたような本」と記しています。それは、もともと人文科学者であった著者が、我が子を妊娠したことをきっかけに、医師、科学者の分野を志したという一風変わった経歴によるからなのかもしれません。それ故、精神医学についての理解を広く一般の人々にもしてもらいたいという願いが込められているようです。

 内容は、精神疾患のモデル、精神疾患の具体的な例を挙げながらの分類や症状、神経科学における脳の様々な機能、精神疾患の診断の歴史から治療方法の変遷、おまけに、巻末には専門用語についての用語解説(向精神薬の一般名と日米商品名の対照表までついてます)まで、いたれりつくせりの内容です。

 すでに音楽療法で精神疾患の対象者と関わっている方から、学びはじめの方まで、それぞれの立場で読むことができると思います。私にとっては、一読で終わらず、折に触れ、何度でも繰り返しページを開く、そんな存在になりそうです。                           
                                                   研究員 惠良純子
 「子どもの豊かな世界と音楽療法〜障害児の遊び&コミュニケーション〜」
          加藤博之著 (明治図書、2005年)
  子どもたちは大好きな音楽活動の中で、知らず知らずにコミュニケーションや感情をコントロールする力を身につけていきます。本書では、そんな子どもたちの力を高める音楽活動の方法がたくさん紹介されています。

 加藤氏は、『NPO法人子ども発達センターとまと』を主催し、幼児から高等部段階の障害児を対象に小集団の音楽療法を実践しています。そこでは、一人ひとりが自由にのびのびと表現をする中で、情緒の安定やコミュニケーション能力を育て、やがてスムーズに集団適応ができることを目指しています。

 本書では、著者の数多くの実践例が紹介されています。それらは、活動のねらいや援助のポイントが明確で、ビジュアル的にもわかりやすくなっています。 また、集団活動では、子どもたちのサインを見逃しがちになるのですが、重い障害のある子やちょっと気になる子が出す小さなサインをしっかりキャッチしながら、一人ひとりにスポットライトを当てている様子が伝わってきます。

 きっと子ども達にとって、楽しいセッションになっているのだろうなぁと、読みながらほほえましく思いました。 やはり、音楽療法の学びは「臨床」にあると再確認した、おすすめの一冊です。

                                                  研究員 吉安育美


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